人情古今同帰である。茶山は蘭軒に善悪二本を鑑別する法を授けた。それは巻尾に登々庵《とう/\あん》の五古を載せたものが善本だと云ふのである。「読恥庵集書感」の詩で、「垂老空掻首、人間鎮寥※[#「門<貝」、第4水準2−91−57]」を以て結んであるのが即是である。
 次は狩谷|※[#「木+夜」、第3水準1−85−76]斎《えきさい》の店津軽屋と筑前船との事、塙保己《はなはほき》一から取り寄せる書籍の残の事、蠣崎波響《かきざきはきやう》へ文通の事である。初わたくしは前に引いた書に波響だけが「君」と書してあり、又此書にも「殿」と書してあるのを何故かと疑つた。既にして詩集の「蠣崎公子」「蠣公子」「波響公子」等の称呼に想ひ及んで、わたくしの疑は一層の深きを加へた。そこで五山堂詩話を検すると、波響は「松前侯族」だとしてある。又茶山自家の文中「題六如上人手写詩巻首」にも「公子従政于国」と云つてある。わたくしは此に至つて波響が松前若狭守|章広《あきひろ》の親戚であることを知つた。わたくしは進んでどう云ふ筋の親戚かと云ふことをも知りたくなつた。数日の後の事である。偶然六|如《によ》の詩集を飜して見てゐると
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