の批閲を経たものが多い。批閲は後に加へたものである。これに反して茶山は春以来|屡《しば/\》書を蘭軒に寄せたのに、蘭軒は久しくこれに答へなかつた。蘭軒は病んではゐたが、其病は書を裁することを礙《さまた》ぐる程のものではなかつたらしい。前年|吟哦《ぎんが》を絶つてゐた故が不審である如く、此年に不沙汰をした故も亦不審である。
 茶山は六月十二日に今川槐庵に書を与へた。これは槐庵をして蘭軒の報復を促さしめようとしたのである。此書はわたくしが饗庭篁村《あへばくわうそん》さんに借りた茶山|手柬《しゆかん》の中の一通である。
 わたくしは茶山の書の全文を此に写出する。
「大暑の候|愈《いよ/\》御安祥御勤被成候由、奥様にも定而《さだめて》御安祥、恐悦奉賀候。先頃は新様封皮《しんやうほうひ》沢山に御恵被下、忝奉存候。御蔵版に御座候而又も可被下旨、別而《べつして》雀躍仕候。近比は御多事に御座候由、御推察申上候。」
「伊沢いく度状遣候も、一字隻言之返事もなく候。此人今は壮健之由可賀候。」
「蘇州府の柳を※[#「口+羅」、第3水準1−15−31]《もらひ》、庭前にさしおき、活し申候。大《おほき》になり、枝
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