安井夫人
森鴎外
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)仲平《ちゅうへい》さんは
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)一|郷《ごう》に伝えられている
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)古賀※[#「にんべん+同」、第3水準1−14−23]庵《こがとうあん》
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「仲平《ちゅうへい》さんはえらくなりなさるだろう」という評判と同時に、「仲平さんは不男《ぶおとこ》だ」という蔭言《かげこと》が、清武《きよたけ》一|郷《ごう》に伝えられている。
仲平の父は日向国《ひゅうがのくに》宮崎郡清武村に二|段《たん》八|畝《せ》ほどの宅地があって、そこに三棟の家を建てて住んでいる。財産としては、宅地を少し離れた所に田畑を持っていて、年来家で漢学を人の子弟に教えるかたわら、耕作をやめずにいたのである。しかし仲平の父は、三十八のとき江戸へ修行に出て、中《なか》一年おいて、四十のとき帰国してから、だんだん飫肥《おび》藩で任用せられるようになったので、今では田畑の
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