カズイスチカ
森鴎外

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)花房《はなぶさ》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)年々|宿根《しゅくこん》が残っていて

〔〕:アクセント分解された欧文をかこむ
(例)〔d'oe&il〕
アクセント分解についての詳細は下記URLを参照してください
http://aozora.gr.jp/accent_separation.html
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 父が開業をしていたので、花房《はなぶさ》医学士は卒業する少し前から、休課に父の許《もと》へ来ている間は、代診の真似事《まねごと》をしていた。
 花房の父の診療所は大千住《おおせんじゅ》にあったが、小金井きみ子という女が「千住の家」というものを書いて、委《くわ》しくこの家の事を叙述しているから、loco《ロコ》 citato《チタト》 としてここには贅《ぜい》せない。Monet《モネエ》 なんぞは同じ池に同じ水草の生《は》えている処を何遍も書いていて、時候が違い、天気が違い、一日のうちでも朝夕の日当りの違うのを、人に味《あじわ》わせるから、一枚見るよりは較べて見る方が面白い。そ
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