これには僕もひどく恐縮せざることを得ない。それから男が女を択《えら》ぶように、女も男を択ぶのが、正当な見合であるということも、お母様は認めて下さらない。お母様の仰ゃるには、おお方そんな事を言うのは、男女同権とかいう話と同じ筋の話だろう。昔から町家の娘には、見合で壻《むこ》をことわるということがあった。侍の娘は男の魂を見込んで娵《よめ》に往くのだから、男の顔を見てかれこれ云う筈はない。それが日本ばかりの事であっても、好い事なら好いではないか。しかしお父様のお話を聞いたうちに、西洋の王様が家来を隣国へ遣《や》って娵を見させるという話があった。そうして見れば、西洋でも王様なんぞは日本流に娵を取られると見えると、こう仰ゃる。僕は、西洋の事なんぞは、なるたけ言わないようにしているのに、お母様に西洋の例を引いて弁じ附けられて、僕は少し狼狽《ろうばい》した。
僕の方にはまだ言いたい事は沢山有ったが、この上|反駁《はんばく》を試みるのも悪いと思って、それきりにしてしまった。
この話をして間もなく、お父様の心安くしていらっしゃる安中《あんなか》という医者が来て、或る大名華族の末家《まっけ》の令嬢を貰
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