ぐうぐう寝る。僕は飯を食って来る。三十分になる。八時には日課が始まるのである。古賀を起す。
「何時だ」
「七時三十分だ」
「まだ早い」
 十五分前になる。僕は前晩に時間表を見て揃《そろ》えて置いたノオトブックとインクとを持って出掛けて、古賀を起す。
「何時だ」
「十五分前だ」
 古賀は黙って跳《は》ね起きる。紙と手拭とを持って飛び出す。これから雪隠《せっちん》に往って、顔を洗って、飯を食って、教場へ駈け附けるのである。
 古賀|鵠介《こくすけ》の平常の生活はこんな風である。折々古賀の友達で、児島十二郎というのが遊びに来る。その頃絵草紙屋に吊るしてあった、錦絵の源氏の君のような顔をしている男である。体じゅうが青み掛かって白い。綽号《あだな》を青大将というのだが、それを言うと怒る。尤《もっと》もこの名は、児島の体の或る部分を浴場《ふろ》で見て附けた名だそうだから、怒るのも無理は無い。児島は酒量がない。言語も挙動も貴公子らしい。名高い洋学者で、勅任官になっている人の弟である。十二人目の子なので、十二郎というのだそうだ。
 どうして古賀と児島とが親しくしているだろうと、僕は先ず疑問を起した。さ
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