のに引かれる Neugierde である。
 二台の車は大門に入った。霽波の車夫が、「お茶屋は」と云うと、霽波が叱るように或る家の名をどなった。何でも Astacidae 族の皮の堅い動物の名である。
 十二時を余程過ぎている。両側の家は皆戸を締めている。車は或る大きな家の、締まった戸の前に止まった。霽波が戸を叩くと、小さい潜戸《くぐりど》を開けて、体の恐ろしく敏速に伸屈《のびかがみ》をする男が出て、茶屋がどうのこうのと云って、霽波と小声で話し合った。暫《しばら》く押問答をした末に、二人を戸の内に案内した。
 二階へ上ると、霽波はどこか行ってしまった。一人の中年増《ちゅうどしま》が出て、僕を一間に連れ込んだ。
 細長い間《ま》の狭い両側は障子で、廊下に通じている。広い側の一方は、開き戸の附いた黒塗の箪笥《たんす》に、真鍮《しんちゅう》の金物を繁く打ったのを、押入れのような処に切り嵌《は》めてある。朱塗の行燈の明りで、漆と真鍮とがぴかぴか光っている。広い側の他の一方は、四枚の襖《ふすま》である。行燈は箱火鉢の傍に置いてあって、箱火鉢には、文火《ぬるび》に大きな土瓶《どびん》が掛かっている
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