》の上に飛び降りた。勝も飛び降りた。僕は又縁に上って、尻を※[#「※」は「寒のしたのちょんちょんのかわりに衣」、19−18]《まく》った。
「こうして飛ばんと、着物が邪魔になって行《い》けん」
僕は活溌に飛び降りた。見ると、勝はぐずぐずしている。
「さあ。あんたも飛びんされえ」
勝は暫く困ったらしい顔をしていたが、無邪気な素直な子であったので、とうとう尻を※[#「※」は「寒のしたのちょんちょんのかわりに衣」、20−4]って飛んだ。僕は目を円くして覗いていたが、白い脚《あし》が二本白い腹に続いていて、なんにも無かった。僕は大いに失望した。Operaglass で ballet を踊る女の股《また》の間を覗いて、羅《うすもの》に織り込んである金糸の光るのを見て、失望する紳士の事を思えば、罪のない話である。
その歳の秋であった。
僕の国は盆踊の盛な国であった。旧暦の盂蘭盆《うらぼん》が近づいて来ると、今年は踊が禁ぜられるそうだという噂《うわさ》があった。しかし県庁で他所産《たしょうまれ》の知事さんが、僕の国のものに逆うのは好くないというので、黙許するという事になった。
内から二三丁ばかり先は町である。そこに屋台が掛かっていて、夕方になると、踊の囃子《はやし》をするのが内へ聞える。
踊を見に往《い》っても好いかと、お母様に聞くと、早く戻るなら、往っても好いということであった。そこで草履を穿《は》いて駈け出した。
これまでも度々見に往ったことがある。もっと小さい時にはお母様が連れて行って見せて下すった。踊るものは、表向は町のものばかりというのであるが、皆|頭巾《ずきん》で顔を隠して踊るのであるから、侍《さぶらい》の子が沢山踊りに行く。中には男で女装したのもある。女で男装したのもある。頭巾を着ないものは百眼《ひゃくまなこ》というものを掛けている。西洋でする Carneval は一月で、季節は違うが、人間は自然に同じような事を工夫し出すものである。西洋にも、収穫の時の踊は別にあるが、その方には仮面を被《かぶ》ることはないようである。
大勢が輪になって踊る。覆面をして踊りに来て、立って見ているものもある。見ていて、気に入った踊手のいる処へ、いつでも割り込むことが出来るのである。
僕は踊を見ているうちに、覆面の連中の話をするのがふいと耳に入った。識《し》りあいの男
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