みょうじま》といふ拵《こしらえ》、好《よ》く稼《かせ》ぐとは偽《うそ》か真《まこと》か、肉置《ししおき》善き体ながらどちらかといへば面長《おもなが》の方なるに、杯洗《はいせん》の上に俯《うつむ》いてどつちが円いかしらなどとはどういふ心か、荻江の文子《ふみこ》さんが来て、小竹《こたけ》も梅子《うめこ》も内に遊んでゐましたといふに、そんなら呼べと座は遽《にわか》に賑《にぎや》かになりぬ、三谷が梅子に可哀さうに風を引いてゐるといへば、お万引き取りて、この子の寝ざうといつたらございませぬ、それに幾らねんねでも、先刻《さっき》も文子さんが遊びに来ると、鼻をかまうかしらと相談してと笑ふ、三谷色気がない内が妙だといへば、兼吉がそこ処《どこ》は受け合はれませぬ、竹ちやんが岡惚帳《おかぼれちょう》拵《こしら》へれば、いいえあら嫌なんてつたつて話すわ、梅ちやんも人真似をして、ためになるお客の上には大の字、気に入つたお客の上には上の字が幾つも重ねて附けてあるといふ、三谷|己《おれ》の名は上の字が十ばかりあるはずとからかへば、沢山附いてますと笑ふは痩ぎすの小竹、あら大の字の方だわと正直にいふは靨《えくぼ》の梅
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