た新米議員の半田房之助がのこのこやって来た。炉の前へ近づくのを待ちかねて、
「おい、君は何かい、昨夜か、一昨夜か知らねえが、こぶ[#「こぶ」に傍点]の家へ集まったか。」
「ひまち[#「ひまち」に傍点]にか――」
「何か知らねえが、予算会議はこぶ[#「こぶ」に傍点]の私邸[#「私邸」に傍点]であったらしい。」
「へえ、俺は知らんね。日まちにちょっと顔を出したが、――沢屋がわざわざ招びに来たもんだから……」
「へえ、沢屋の野郎が、招びに……」
「君のところへは。」
「来たっけが、別に招ばなかったな。」
「いや、あれが、つまり、その……らしい。」
「畜生、ひとを馬鹿にしてらア――」
ようやくのことで――もう昼近い――二三の村議連がやって来たので、それ以上、田辺は言わなかったが、心の中では、……
そしてやがて瘤もやって来た。が、田辺や半田には眼もくれず、「謄写は出来たか。……ああ、そう、では、慎重に、研究しておいてくれ、俺はもう出かけなくちゃア……」
田辺はぐいと村長をにらんで、
「村長、今日も、またお出かけですか。」
「ああ、重大な用事があって……いや、どうも身体が二つあっても足りはせ
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