いであった。議事といえば村社修復後の跡始末――木材や竹切がまだ残っている、あいつを早く片付けさせること、社前の水はき[#「はき」に傍点]をよくしなくては参詣者が雨降り毎に難儀する……というようなことが助役の口から出て、異議なし、異議なし。……それだけであった。
五
つぎの月の村会も大同小異で、なんら議題というほどのことはなく、雑談と茶碗酒にすぎてしまった。そして、しかもそれだけのことで、一日二円の日当――三日間で六円になるのだから「偉い」ものであった。いや、偉いものといえば、他の村会議員――瘤派の連中は何々委員とか、何々調査員とかいう役目をかねていて、三日にあげずにその辺をうろつき廻り(たとえばどこの田圃の石橋はどうなっているとか、伝染病の予防施設がどうとか、そんなちょっとした通りがかりにも調べられるようなことを業々しく見て廻って)、それでやはり日当を取るし、とうぜん、村長の出なければならぬ席上へ代理に出ても日当(村長は他へ出張。)こういうことのほか、役場員自身がまた、社寺、土木、衛生、税務……などそれぞれ自分の分担事務の名目において他村へ「調査」などに出かけ、旅費をせ
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