しめる。
ばかりでなく瘤派の連中は、何かは知らぬが始終飲食店で会合したり、でなければこそこそと瘤の家へまかり[#「まかり」に傍点]出て夜半まで過すというようなことをやらかしているらしかった。
田辺は無論いまだそういうのが実は本当の村会であって、月一回きめられた日に役場へ会合するのなど、単にそれは日当の手前、ちょいと顔を出す程度のことにしかすぎない……などとは知らなかったのである。
だから、彼はいよいよ次年度の予算案が討議されるという月の村会日の二三日前、ぶらりと沢屋米穀商が肥料売込みの風をしてやって来て、つぎのように誘いをかけたことも真意が解けずにしまったのだ。
「瘤のとこで今夜『お日まち』があるんだ。」「お日まち」というのは何か起源やいわれは分らないが、親しい同志が寄って一杯飲むことで通っている。
「どうだい、顔を出したら……」と沢屋は禿げ上った額をつるりと撫でるようにしてソフト帽をかぶり自転車に片脚をかけて、「みんな来るはずになっているんだが、あんたもひとつ……」
「そうよな、でも、どうせ、俺なんか酒はあんまりやらんし、瘤のエロ話も若干ぞっとせんからな。」
「ぞっとするような
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