に傍点]を出さずに「治め」て行くには、瘤のような腕力のすぐれた、県の役人など屁とも思わない「猛者」――これについては※[#「插」でつくりの縦棒が下に突き抜けている、第4水準2−13−28]話があるのだが、――でなければ出来ないことであろう――いや、並大抵の人物では、組合も清算を要求されるであろうし、農会もやっつけられるであろうし、そうすれば勢い、役場そのもの、村そのものも打潰されずにはいまい。瘤が頑張っているから、この村はなんとかかんとか保っているようなものの、奴がいなかったら畦一本残らず、他の町村へ持ってゆかれなければならぬであろうという者が出て来た。
意外な瘤礼讃を聞くものかなと田辺はびっくりしてその話し手を眺めずにいられなかったのである。全村民の与望を荷って出馬したものとばかり考えて、多少英雄的な気負いさえ感じていた彼は、事ここにいたって瘤に対し、ないし村民に対しての自分の評価、考え方を訂正しなければ、自分自身がどんな陥穽にはまるか分らないと考えるようになった。
四
瘤村長に対する全く矛盾したこの村民の態度――一方においては自分達を喰うところの悪鬼的な存在として
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