だ。取れねえはずよ、多少土地を持っていた人間にせよ、いまでは銀行の方だって間に合うめえから、同じ穴の連中のやっている組合の方なんか見向きも出来るもんか。」
 田辺の家でも、役こそしてないが、組合の創立委員の一人として、二十五口かを出資しているはずであった。いざ清算となれば、それではどれほどの補償金が背負わされるか分ったものではない。
 薄氷の上に建てられた楼閣のような組合の内幕から、それに関連して、Sという大字《おおあざ》の連中は最初から組合の機能に疑問をいだいて加入せず、主として町の銀行から融通したが、それが最近頻々として差押処分を食っているという話になった。
「銀行と来ては用捨《ようしゃ》はねえからな。借りにゆく時はこっそり誰にも分らず行けるからいいようなものの、いざとなればよ。」
 S大字の土地は大半町の金持連の手に渡って、昨日の地主、いまは内実は小作人であると言う。
 それから話は村農会のことに移って、ここも何らの仕事もせず、会長である瘤以下の役員の給料源でしかないというのであった。ところが、ここで話は一転して、最後に、こういう内情にある村そのものを、とにかく、ぼろ[#「ぼろ」
前へ 次へ
全44ページ中17ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
犬田 卯 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング