があるんだか、化成か魚糟か大豆か……」
「化成は切れっちまったが、魚糟配合があるんだ。」
「それは……山十か。誰が一体、持っているんだ。」
「君、そんなことはどうでもいい。俺と君との間の商取引だねえか。肥料は俺が持っているのさ――ひとのものなんか君、泥棒じゃあるめえし。」
「うむ、とにかく現物さえあるんなら、何も問題ではねえが……で、一叺いくらなんだ。」
「公定価額だよ」と唇を突出して言いながら、塚屋は懐中から小さい算盤を出して斜めにかざし、得意そうにぱちぱちと珠を入れた。
「そんな公定あるもんかい。」
浩平はおっかぶせるように叫んで塚屋をにらみ、それから、ぷいとそっぽを向く。
「無えことあるもんか。どこさ行ったってこれ[#「これ」に傍点]だ。これ[#「これ」に傍点]でなかったら、こんどは見ろ、組合からだって手に入らねえから。」
いやなら止すと言わぬばかりである。
「うむ――」と浩平は今は折れるしかなかった。「それで……何叺あるんだか。」
「君は何叺要るんだか、それによって俺の方はいくらでも都合する。」
「俺は、まア、差しあたり二十もあれば……」
「二十か、よし、都合つける。――明
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