となんかもはや不感症以上で、「二三日したらどうにかなるだろう!」と図太くも高をくくる癖がついている。これは実に百姓生活をしている人達には分らぬ気持であり、また事実でもある。余談になるが、浩さんへ無けなしの十円を出してやると、それがぱっと喧伝されたとみえて、やがて私たちは、金をのこして村へ引っ込んだ……という噂が立ってしまい、大いに面目を……否お蔭でさまざまな窮地に陥込むことになるのだが、それはあとの話である。
* * *
浩さんはなかなかいける口らしいと知ったのは、その十円を持っていそいそと帰って行った夕方、その妹が例の「ちょっとした」姿をして村の辻へ走るらしかったからである。――が、そんなことはどうでもいいことだ。ただこの妹については、村人の話だと、彼女ゆえに、浩さんのもとの女房はいわゆる「逐電」したのであり、どうも奴らは若い頃から「怪しかった」というのであるが、実は私たちも、最初は妹とは知らず、若いのと取りかえたのだろうと信じていたのだった。が、これも実はどうでもいいことだ。とにかく浩さんも村人なみに旧正月を迎える支度をするだろうと、妹のその姿を眺めた
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