な生計を立てていたのである。妹だという三十二三の女は、村に似合わぬ町場の商売女のような風姿をして、なすこともなく家の中に遊んでいた。彼女は十年も「籠の鳥」――村人の言葉――をしたあげく、そこを出て来てからは、いわゆる「ちょっとした」その風姿が物語るごとく、場末のカフェとか、田舎町の料理店とかを転々としていたのだそうで、「三日もすると」――これも村人の表現――そこを飛び出してしまうのが常習であったとか。
        *    *    *
 もっともこうしたことは、私たちはあとで聞いたので、帰村当時は、村人ともあまりそういう種類の話をする機会もなかったので、何も知らなかったのである。しかし浩さんが村でいう「とはり」というところの出であることは、私は彼の小さい住居が私の家の前の桑畑の片隅へ建ったとき聞いていた。それにしても私たちにとって、そうした種類のことは少しも問題でなかったのである。月に三日間、ことによっては差し繰って五日でも六日でも仕事にやって来てくれるという一事に、私たちは最大の利便と助力とを感じたのであったのだ。
 約束は伐り払ったままになっていた椎の木の枝を片づけに一日頼ん
前へ 次へ
全37ページ中29ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
犬田 卯 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング