成就させたについて、俺どももこれ、ちょっぴり功労があったかと思うと、東京サ行って、まるで西洋みてえな丸の内なんちうところドレエブしてみろ、いい気持なもんだぜ。」
そこで儀作は永年胸のうちにくすぶっていたものを吐き出した。
「でも、あれですね、村長さん。俺ら、川の水ながれるところまで高い金を出して買わされて、その金で東京おっ立ててみても、これ……。それに、あれです、いくらあの川ンとこを測量してみて『買い上げ』てくれと請願しても、村長さんはちっとも、てんではア取りあげてくんなかったし……」
「冗談いってら、あれは君、ちゃアんと俺は村長の職務引き渡しすっとき、後任へ話しておいたぜ。あれをまだ実行せんのかい、怪《け》しからん奴じゃ。事務怠慢にもほどがある。」
「俺はもう請願するたびに面白くねえ思いするばかりだから、あっさり諦めてますがね。」
「うむ、まアそれもそうだな。人間、なんでも諦めが肝心だって、古人も教えているからな。」
「でも、村長さん、あの時の五十円が、いつか二百円になってますぜ。」
「放っておけば当然……だが君、そう言っちゃなんだが、あの頃出来た君の娘も、いつか十七八になってやし
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