から、私に幾つかと聞くので、齢を言うとそれにしては大変若く見えると言った。私は若く見えるといわれると、うれしい気がするのである。
自分は子供の時以来、鏡を見たことがないので、眼明きの言うことを、真に受けてもよい様な気がして、今迄にも人から若く見えると言われると、そうかなと思って、自分の顔を撫でてみる。
撫でるといえば、何時か或る彫刻家が、私の顔を彫ってくれたので、早速撫でてみると、でこぼこしている様に感じたので、これは私の顔に似ているかと家の者にたずねると、そっくりだといわれたのには案外に思ったことがあった。
その人は、私は長生きをする様にと言った。そして、これからは段々医術が進んで来て、なおらぬ眼もあく様になるかも知れぬと言った。
以前、たしかアメリカの話であったが、八十のお婆さんが、もう老いさきも短いからといって、自分の眼を片一方、或る盲人にあたえた。盲人はその眼と入れ替えて貰うと、片眼見える様になったとか、また動物の眼と入れ替ることも研究されているとかいう話であった。私も何か聞いたことのある様な気がした。
それから、また或る国では、子供の何かの成分を老人に注射すると、段
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