色を出している人があるそうだし、極く普通に黄色い声などというのもそれであると思う。
自然の音は、私共にとって最も親しいものである。風の音、雨の音、虫の音、小鳥の囀る声、何一つとして楽しくないものはなく、面白くないものはない。
同じ風でも、松風の音、木枯の音、また撫でるような柳の風、さらさらと音のする笹の葉など、一つ一つに異った趣きのあるものである。
私は雨の音が殊に好きである。とりわけ春の雨はよいもので、軒から落ちる雨だれの音などきいていると、身も心も引き入れられてしまうような感じがする。
虫の音にも、まつむし、鈴虫、くつわむし、それぞれ趣きがあってよい。秋の夜長を楽しませてくれるこれ等の小音楽師達に、私は心からの感謝を捧げたく思う。
私はまた、小鳥が好きで、都会の中に住んでいると、自然の森や林で自由に囀る鳥の音を聞かれぬことは淋しい。私は作曲に感興が湧いて、自然の音にひたりたいと思う時などは、いても立ってもいられない程、懐しい思いがする。
自然の音はまったく、どれもこれも音楽でないものはない、月並な詩や音楽に現わすよりも、自然の音に耳をかたむける方が、どれだけ勝《すぐ》れ
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