がね、松緑を預つて居る騎手は黒沢文、けれども親爺は乗らぬで黒沢の息子を乗せるのです。初日に部屋に行つて、今日は、松、どうだい、松緑は好きですからね。今日は調子は悪くないな、斯云ふ、彼方が調子が悪くないと云へば宜いのですね、さうして探つて見ると十幾枚松緑を買ひましたよ。黒沢の手で……。それを見たものですから確かだと思つて、彼方に乗り此方に乗りして大分買つた。黒沢の預つて居る部屋で、時分の息子が乗るのですから大丈夫と思つて、十何枚馬券を買つたから、それを知つて私からもやりましたが、だらしのない負けやう。それから馬鹿々々しいから部屋に行つて見た。どうしたんだらう出ない、外れちまやがつたと云つて居りました。其明くる日競馬場に這入る前に部屋に行きまして、昨日は丸で出なかつたがどうしたい。昨日は出なければならぬのに、あんな風になつたんです。あれでは受合ふことが出来ぬ。勿論何時やつたつて受合ふことが出来ぬけれども、と云つて捨てることは出来ぬので、買ふならば余計買はぬ方がでせうと云ふので、黒沢で二枚しか買はなかつた。それが端切りつ放しの第一着になつた。ですから八百長も故ら出来ない。
草競馬は兎に角、
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