四条 身体を大切にし健康を保つは、人間|生々《せいせい》の道に欠く可らざるの要務なり。常に心身を快活にして、苟《かりそ》めにも健康を害するの不養生を戒む可《べ》し。
第五条 天寿を全うするは人の本分を尽すものなり。原因事情の如何《いかん》を問はず、自《みず》から生命を害するは、独立自尊の旨に反する背理卑怯の行為にして、最も賤《いやし》む可き所なり。
第六条 敢為活溌《かんいかっぱつ》堅忍不屈《けんにんふくつ》の精神を以てするに非ざれば、独立自尊の主義を実《じつ》にするを得ず。人は進取確守の勇気を欠く可《べか》らず。
第七条 独立自尊の人は、一身の進退方向を他に依頼せずして、自《みず》から思慮判断するの智力を具へざる可らず。
第八条 男尊女卑は野蛮の陋習《ろうしゅう》なり。文明の男女は同等同位、互に相《あい》敬愛《けいあい》して各《おのおの》その独立自尊を全《まった》からしむ可《べ》し。
第九条 結婚は人生の重大事なれば、配偶の撰択は最も慎重ならざる可らず。一夫一婦終身同室、相敬愛して、互いに独立自尊を犯さゞるは、人倫の始なり。
第十条 一夫一婦の間に生るゝ子女は、其父母の他《ほか》に父母なく、其子女の他に子女なし。親子の愛は真純の親愛にして、之を傷《きずつ》けざるは一家幸福の基《もとい》なり。
第十一条 子女も亦独立自尊の人なれども、其幼時に在《あり》ては、父母これが教養の責《せめ》に任ぜざる可《べか》らず。子女たるものは、父母の訓誨に従《したがっ》て孜々《しし》勉励、成長の後、独立自尊の男女として世に立つの素養を成す可《べ》きものなり。
第十二条 独立自尊の人たるを期するには、男女共に、成人の後にも、自《みず》から学問を勉め、知識を開発し、徳性を修養するの心掛を怠る可らず。
第十三条 一家より数家、次第に相集りて、社会の組織を成す。健全なる社会の基《もとい》は、一人一家の独立自尊に在りと知る可し。
第十四条 社会共存の道は、人々《にんにん》自《みず》から権利を護り幸福を求むると同時に、他人の権利幸福を尊重して、苟《いやしく》も之を犯すことなく、以て自他の独立自尊を傷《きずつ》けざるに在り。
第十五条 怨《うらみ》を構へ仇《あだ》を報ずるは、野蛮の陋習にして卑劣の行為なり。恥辱を雪《そそ》ぎ名誉を全うするには、須《すべか》らく公明の手段を択《えら》むべし。
第十六条
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