のあるところまで下った、その時は十一時頃であった、こうなってはとても鴛泊まで行かれそうもないから、いっその事|此処《ここ》で露営した方がと思うた、それはツマリこの石のゴロゴロした谷を伝うて下るのであるから、とても今までのようなことではないという話であったから、止《やむ》を得ずそのことに決した、此所《ここ》に落付くことになったが、何分にも下は湿っているし、寒くはあるし、中々眠ることは出来ない、その上に雨は本式に降り出したので、何んともいえない困難をした。
十三日の朝になって、漸く宿に着した時には、もとより笠もないのであるからして、まるで濡鼠のようになって、衣服は全く水漬になってしまったのである、そんな有様であるから、雨の降るのを幸いに十三日一日は宿に閉籠って休憩《きゅうけい》をして、その次の十四日には雨も霽《は》れたから、加藤木下両氏と共に多少の散歩をした位で、十五日になってから、やっと小樽行の船が鴛泊に着したのでこれに乗込んだ、勿論往きに乗った日高丸が帰って来るはずであるが、どういう都合かその船の代りに駿河丸が来たので、それに乗って十六日の夜の十二時頃小樽の越中屋に帰着した、それから
前へ
次へ
全24ページ中22ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
牧野 富太郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング