先はあるいは札幌の方に足を止《とめ》られた人もあるし、あるいは東京に急いで帰られた人もあるから、思い思いに分れてしまったが、とにかく利尻山の採集はここに全くその局を結んだのである。
余の記憶に残っているのはこんなことであって、誠に紀行とも言えないし、採集記とも勿論言えない位であるから、もし詳しいことを知りたいという方は『植物学雑誌』に出ている、川上君の「利尻島に於ける植物分布の状態」という論文を御覧になれば、山の模様から植物の分布の有様も一層明かになるであろうと思う、しかしとにかく前にも言った通り、登山の紀行を書かなければならぬという事になっているのであるから、申訳ながらせめて御話だけでもして、自分の責を塞《ふさ》ぐ積りである、どうかそのお積りで読んで頂きたい。
底本:「山の旅 明治・大正篇」岩波文庫、岩波書店
2003(平成15)年9月17日第1刷発行
2004(平成16)年2月14日第3刷発行
底本の親本:「山岳 一の二」
1906(明治39)年6月
初出:「山岳 一の二」
1906(明治39)年6月
入力:川山隆
校正:門田裕志
2010年2月4日
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