ラの花のあるのなどが生じておった、この辺は雪が消えて間もないような模様であったが、しかし残雪は認めなかった。
 既に第三峰に行くのを断念したから、この峰から後戻りをして、第一峰に帰り、それから少し下って右の斜面に這入《はいっ》て見たら、この辺は一面に草があって、その中にはアラシグサが沢山生えておった、なおそれから少し下ると雪が沢山に残っている、その大サは幅が十間ばかりもあったであろうか、長く下の方まで連っているのでその長サがどの位あるか殆んど窮めが附かない、この雪の両側にはキンバイソウが黄金色の花を開いて夥しく生じておった、その萼弁《がくべん》が十枚以上あって、あるいは一の新種ではなかろうかと思われるほどである、リシリキンバイソウもこの辺に生じていたし、エゾコザクラも丁度花盛りであった、無論この残雪のあるあたりは、幾分谷のような形をなしていて、その谷の両側は殆んど一面にハイマツが土を掩《おお》うている、そのハイマツを越えて、雪の左の方に向って進んで行けば、露営地の下の谷のところへ出られるのである、漸くこの辺に達した時分に天気が変って来て、終に雨が降り出した。
 あまり所々を採集して時間
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