半には太陽が地平線上に出た、この時西北の方を仰ぎ見ると、昨日は多少雲もあったが、今日は更に一点の浮雲もないので、礼文の方はますます鮮かに見ることが出来た上に、宗谷の方も東に無論見ゆるし、東北の方に一ツの小さな島を見ることが出来た、この島は無論樺太に属するものである、朝の食事を終ってから再び絶頂に進んで、それからなお第二の峰に向って足を進めたが、その間は僅に三、四町に過ぎないといっても宜しいであろう、勿論足場はよくないけれども、無論第一の峰ほどの困難はないのである、第二の峰にはあまり石などはないのであるが、自生している草は、チシマラッキョウ、エゾヨツバシオガマ、ホソバオンタデ、リシリソウなどで、殊にキバナノシャクナゲが甚だ夥《おびただ》しく自生していた、第二峰の先きに第三の峰があるが、この峰に行くのは甚だ困難で、中間に絶壁の殆んど足場の得難いものがあるので、残念ながら全く断念することの止を得ないのを認めた、第二峰から西の斜面に降ったところに、蝋燭《ろうそく》岩という大きな岩がある、岩の上にはタカネツメクサやらコイワレンゲなどが生じていて、またその岩の下には、チシマイワブキやら、エゾコザク
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