その辺を捜して見たところが、左の方に草を分けて一町ほど下れば、其所《そこ》に水もある、また水の辺に小さな小屋があったらしい跡がある、これが今から考えて見ると、川上君などがこの山に籠った処であろうと思う、それから先ず木下君と余は共に夏服であるからして、たださえ夜になれば冷気を感ずる位であるから、この高山の上ではますます寒気が強く堪えられないのは勿論である、従って充分に火を焚《た》いて暖を取ることが肝要であるから、人足に命じてかなり多くの燃料を集めさせた、またその次には小屋という小屋は無論ないから、何とかして自分ら二人の身体を入れるだけのものを拵《こしら》えたいと思ったが、それも思うようには出来ないので、止《やむ》を得ないから、この辺の雑木はつまり、エゾノタケカンバとミヤマハンノキと中に少しずつ、ハイマツも混じっているが、高サが三、四尺位しかないのであるから、それを二人の身体が半分位ずつ入れられるほど結び合せて、その下に木下君と共に腰から上だけを入れるように拵え上げたのである。
この晩は幸にして晴天で、雨の心配はなかったが、風は中々強いので、寒気は膚を徹するというほどであった、実はこの山
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