、あるいはズット先に駈抜けているものもあるし、中々相談をして下山のことを何《いず》れにか決定するということが出来ないのである、段々たるみのところを進んで行く内に、風は次第に強くなるし、時刻も段々移って来たので、何とか話を極《き》めねばなるまいと思っている時、子爵は率先してよほど登られたようであったが、この時とうとう引返して来られたし、木下氏も丁度あまり遠からぬ所におられたので、一同相談を始めた、その相談の結果は、子爵だけは老体のことでもあるし、勿論露営の準備等もないのである上に第一食物の用意がないので、終に人足の大部分を率いて下山せらるることになった、山に残るものは、人足が二人それに木下君と自分と都合四人である、ところがこの四人も勿論食事の用意は更にないのであるからして、下山した人足の内で、直に食物と露営の防寒具等を携えて、再び登り来るように命じて殆んど日没に間近きころ、余らは加藤子爵の一行と袂《たもと》を分つことになった。
 前にも言った通り山上に一泊の予定でなかったから、何らの用意もないので、どうして一夜を明したら宜しいかと一同殆ど当惑したが、第一に水を得なければ困るのであるから、
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