らしいものに出ることが出来たが、これが鴛泊の町から、利尻山に登る本道であるとのことである、道路といってももとより山道であるからして、至って小さい上にまた勾配も急である。
 この辺には、イワツツジが沢山に生えていた、勿論花は既に稀であったが、このイワツツジの果実は赤い色のもので、食うことも出来るしまた芳わしい香があるのである、それから花はないが、この辺には既にキバナノシャクナゲも沢山自生していた、その外にはエゾフスマなどが生じておったと思う、この辺から先きは殆んど峰伝いに頂上に向って進むという有様である、此処《ここ》が恐らく薬師山と称せられる峰であるだろうと思う、もしそうであるとすれば、標高四千尺位の所に一同は既に達しているのである、それから数町の間は峰伝いとは言いながら、たるみがあるので、この辺から前面を望めば頂上も格別遠くなく仰ぐことが出来るけれども、この日はミズゴケ採集のため迂廻《うかい》して少なからぬ時間を費したので、頂上まで登って充分の採集をして、鴛泊まで帰着するということは、よほど困難に思われて来たけれども、この辺からして思い思いに採集しつつ進むので、あるいは遅れた者もあるし
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