に怖しいものであると思う程の盆栽となったのである。
食事をした場所から先きは、水のある谷を伝うて遡《さかのぼ》って行くのであって、別段道という道は更にない、谷の両岸はいずれも雑木やら笹原やらで、谷の中にある石は重に丸味勝の石であったように覚えている、進むに従って谷は漸く窮まって、水も次第に少なくなる、その辺からして谷を捨てて、右の方へ横に這入《はい》ったが、傾斜がますます急で殊に笹が密生して登るのには非常に困難を感じた、この辺でザゼンソウを採集したと思う、笹原の急な傾斜も終には尽きて、低いエゾノタケカンバあるいはその他の樹の、ハイマツに混じて生えているところに出たが、いずれも高くないだけに、ある時には跨《また》ぐことも出来るが、またある時には腰を屈めて潜らなければならぬという有様で、随分登る時には楽でない道筋であった、この辺一体のハイマツは、山火に焼けたのであるか、枝が枯れて白く曝《さら》されたようになって、それも山上に登ってから眺めるというと、殆んど雪でも積っているかと思うほどに白く見えるところが、随分と広いのである、困難に困難を重ねて、一行は殆んど弱り切ってしまった頃に、漸く道路
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