風に飜へる梧桐の実
牧野富太郎

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)俯伏《うつぶせ》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)其|凹《くぼ》い

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「くさかんむり/骨」、53−10]

/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)ヒラ/\/\
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 秋風起つて白雲飛ぶと云ふ時節ともなると、アヲギリ(幹、枝が緑色ながら云ふ)即ち梧桐の種子を着けた其舟状の殻片が、其母枝を離れ翩々として風に乗じ遠近の地に墜ちる、是れは何も珍らしい事ではないが、其れが眼前に落ち散らばつてゐる処を見ると、其殻片が頗る大きな丈けに何となく今更ながら其認識を新たにすることを禁じ得ない
 私の庭に一本のアヲギリがあつてアヲニョロリの名の如くニョロリと緑の直幹を立て、車輻の様に枝椏を張り傘蓋の如く大形の緑葉を着け、亭々として空高く聳立してゐて其れに房々と多くの実を群着し垂れ下がつてゐる
 九月の央ば過ぎにもな
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