ると、其開いた※[#「くさかんむり/骨」、53−10]※[#「くさかんむり/突」の「大」に代えて「犬」、53−10](Folicle)の殻片がちぎれ落ちて地面に散乱してゐる、殻片の両縁には皺のある(始めは平滑なれど)豌豆大の大粒種子が一二顆づゝ着いてゐるが、其れが後ちに殻片から離れて地に委し、来春其処に闊大な子葉を展げた仔苗を萌出させる、故に私の庭には其処此処に多くのアヲギリ苗が生えてゐる、若し之れを其のまゝに放棄して置くとすると年毎に其仔苗が殖えて生長し、遂には私の庭はアヲギリ林に成つて仕舞ふのであらう
アヲギリの殻片は各五枚づゝ集まつてゐるが其れが車の様に開いて居り、そして其舟の様な剛質の各殻片は其|凹《くぼ》い内面を下にして枝端の果穂に附着してゐる、故に仮令雨が降つても其殻片へは水の溜る憂ひはない、間も無く之れが吹き来る風の為めに其基部の柄がちぎれると同時に其凹い内面へ充分に其風を孕んでヒラ/\/\と或は近く或は遠くへ運ばれる、其れが地面へ落ちると其種子の重みに由て其殻片が多くは背面を上にして下を向き俯伏《うつぶせ》になつてゐるのは其処に大に意義の存する点が観られる、即ち此姿勢
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