というのだと解釈してあるが、しかし葉が苦《にが》いというよりは根の方がもっと苦《にが》い、すなわちこの根からいわゆるゲンチアナチンキが製せられ、健胃剤《けんいざい》に使われている。
リンドウは昔ニガナといった。すなわち、その草の味が苦《にが》いからであろう。また播州《ばんしゅう》〔兵庫県南部〕ではオコリオトシというそうだが、これもその草を煎《せん》じて飲めば味が苦《にが》いから、病気のオコリがオチル、すなわち癒《なお》るというのであろう。また葉が笹《ささ》のようであるから、ササリンドウの名もある。
リンドウは向陽《こうよう》の山地、もしくは原野の草間《そうかん》に多く生ずる宿根草《しゅっこんそう》で、茎《くき》は三〇〜六〇センチメートルばかり、葉は狭《せま》くて尖《とが》り無柄《むへい》で茎を抱《いだ》いて対生《たいせい》し、全辺で葉中《ようちゅう》に三|縦脈《じゅうみゃく》があり、元来《がんらい》緑色なれど、日を受けて往々《おうおう》紫色に染《そ》んでいる。秋|更《ふ》けての候《こう》、その花は茎頂《けいちょう》に集合して咲き、また梢葉腋《しょうようえき》にも咲く。花下《かか》に
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