茎《ちかけい》を蒸《む》せば食用にするに足《た》るとのこと、また地方によりこれから澱粉《でんぷん》を採《と》って食《しょく》しているところがある。
 この草は日本と中国との原産で、もとより欧米《おうべい》にはない。欧州のある植物園では非常に珍しがって、たいせつに栽培してあるとのことだ。
 このドクダミはハンゲショウ科に属し、Houttuynia cordata Thunb[#「Thunb」は斜体]. の学名で世界に通っている。この属名はオランダの学者で日本の植物をも書いたホッタインの姓《せい》を取ったものだ。種名のコルダタは心臓形の意で、その葉形《ようけい》に基《もと》づいて名づけたわけだ。

[#「ドクダミの図」のキャプション付きの図(fig46821_17.png)入る]

     イカリソウ

 イカリソウは錨草の意で、その花形《かけい》に基《もと》づいて名づけたものである。実際その花はちょうど錨《いかり》を下《さ》げたようなおもしろい姿を呈《てい》しているので、この草を庭に栽《う》えるか、あるいは盆栽《ぼんさい》にしておき、花を咲かすと、すこぶる趣《おもむき》がある。栽培はいたって簡易《かんい》で且《か》つその草もじょうぶであるから、一度|栽《う》えておくと毎年その時季《じき》には花が眺《なが》められる。
 春に新葉《しんよう》と共《とも》に茎上《けいじょう》に短い花穂《かすい》をなし、数花が咲くのだが、ちょっと他に類のない珍《めずら》しい花形《かけい》である。これを地に栽《う》えるとよく育ち、毎年花が着《つ》く。東京付近のクヌギ林の下などには、諸処に野生しているから、これを採集して来《き》て栽《う》えるとよろしい。種類によっては白花のものもあるが、東京近辺のものはみな淡紫花《たんしか》の品ばかりである。
 花には萼《がく》、花弁、雄蕊《ゆうずい》、雌蕊《しずい》が備《そな》わっていて、植物学上でいう完備花《かんびか》をなしている。萼《がく》は元来《がんらい》、八|片《へん》よりなっているが、しかしその外側の小さき四片は早く散落《さんらく》し、内側の四片が残って花弁状を呈《てい》し、卵状披針形《らんじょうひしんけい》をなして尖《とが》り平開《へいかい》している。花弁が四個あって、前記|残留《ざんりゅう》の四|萼片《がくへん》と共《とも》に花の主部をなしており、著《いちじる》しい長距《ちょうきょ》があって四方に突《つ》き出《い》で、下に向かって少しく弯曲《わんきょく》している。すなわちこれが錨《いかり》の手に当たる部である。
 この長い距《きょ》の底には、蜜液《みつえき》が分泌《ぶんぴつ》せられていて、花は昆虫の来るのを待っている。この虫媒花《ちゅうばいか》であるイカリソウの花へは長い嘴《くちばし》を出す蝶《ちょう》が訪れ、蜜を吸いに来て頭を花中《かちゅう》へ差し込むときその頭へ花粉を着《つ》けて、これを他の花の花柱《かちゅう》の柱頭《ちゅうとう》へ伝えるのである。そして花柱のもとにある子房《しぼう》が、ついに果実となるのである。
 花中《かちゅう》には四|雄蕊《ゆうずい》がある。その長い葯《やく》は、葯胞《やくほう》の片《へん》がもとから上の方に巻《ま》き上がって、黄色の花粉を出している特状がある。このような葯《やく》を、植物学上では片裂葯《へんれつやく》と称している。雌蕊《しずい》は一本で、緑色の子房《しぼう》とほとんど同長な花柱《かちゅう》が上に立っており、その頂《いただき》に花頭《かとう》があって花粉を受けている。
 葉は、地下茎《ちかけい》から出《い》で立つ一本の長い茎《くき》の頂《いただき》から一方は花穂《かすい》となり、一方はこの葉となって出ていて長柄《ちょうへい》があり、それが三|柄《へい》に分かれ、さらにそれが三|小柄《しょうへい》に分かれて各|小柄《しょうへい》ごとに緑色の一|小葉片《しょうようへん》が着《つ》いている。葉片《ようへん》は心臓状卵形で尖《とが》り、葉縁《ようえん》に針状歯《しんじょうし》があり、花後《かご》にはその葉質《ようしつ》が剛《かた》くなる。かく小葉《しょうよう》が一|葉《よう》に九|片《へん》あるので、それで中国でこの草を三|枝《し》九|葉草《ようそう》というのだが、淫羊※[#「くさかんむり/霍」、第3水準1−91−37]《いんようかく》というのがその本名である。しかしこの淫羊※[#「くさかんむり/霍」、第3水準1−91−37]《いんようかく》の名は、この類の総称のようである。
 右|漢名《かんめい》(中国名のこと)の淫羊※[#「くさかんむり/霍」、第3水準1−91−37]《いんようかく》に就《つ》き、中国の説では、羊がこの葉(※[#「くさかんむり/霍」、第3水準1−91−
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