り、著《いちじる》しい長距《ちょうきょ》があって四方に突《つ》き出《い》で、下に向かって少しく弯曲《わんきょく》している。すなわちこれが錨《いかり》の手に当たる部である。
この長い距《きょ》の底には、蜜液《みつえき》が分泌《ぶんぴつ》せられていて、花は昆虫の来るのを待っている。この虫媒花《ちゅうばいか》であるイカリソウの花へは長い嘴《くちばし》を出す蝶《ちょう》が訪れ、蜜を吸いに来て頭を花中《かちゅう》へ差し込むときその頭へ花粉を着《つ》けて、これを他の花の花柱《かちゅう》の柱頭《ちゅうとう》へ伝えるのである。そして花柱のもとにある子房《しぼう》が、ついに果実となるのである。
花中《かちゅう》には四|雄蕊《ゆうずい》がある。その長い葯《やく》は、葯胞《やくほう》の片《へん》がもとから上の方に巻《ま》き上がって、黄色の花粉を出している特状がある。このような葯《やく》を、植物学上では片裂葯《へんれつやく》と称している。雌蕊《しずい》は一本で、緑色の子房《しぼう》とほとんど同長な花柱《かちゅう》が上に立っており、その頂《いただき》に花頭《かとう》があって花粉を受けている。
葉は、地下茎《ちかけい》から出《い》で立つ一本の長い茎《くき》の頂《いただき》から一方は花穂《かすい》となり、一方はこの葉となって出ていて長柄《ちょうへい》があり、それが三|柄《へい》に分かれ、さらにそれが三|小柄《しょうへい》に分かれて各|小柄《しょうへい》ごとに緑色の一|小葉片《しょうようへん》が着《つ》いている。葉片《ようへん》は心臓状卵形で尖《とが》り、葉縁《ようえん》に針状歯《しんじょうし》があり、花後《かご》にはその葉質《ようしつ》が剛《かた》くなる。かく小葉《しょうよう》が一|葉《よう》に九|片《へん》あるので、それで中国でこの草を三|枝《し》九|葉草《ようそう》というのだが、淫羊※[#「くさかんむり/霍」、第3水準1−91−37]《いんようかく》というのがその本名である。しかしこの淫羊※[#「くさかんむり/霍」、第3水準1−91−37]《いんようかく》の名は、この類の総称のようである。
右|漢名《かんめい》(中国名のこと)の淫羊※[#「くさかんむり/霍」、第3水準1−91−37]《いんようかく》に就《つ》き、中国の説では、羊がこの葉(※[#「くさかんむり/霍」、第3水準1−91−
前へ
次へ
全60ページ中46ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
牧野 富太郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング