は擬対生《ぎたいせい》し、あるいは擬輪生《ぎりんせい》する。
秋に茎《くき》の上部|分枝《ぶんし》し、小枝端《しょうしたん》に五|裂《れつ》せる鐘形花《しょうけいか》を一|輪《りん》ずつ着《つ》け、大きな鮮紫色《せんししょく》の美花《びか》が咲くが、栽培品には二重咲《ふたえざ》き花、白花、淡黄花《たんおうか》、絞《しぼ》り花、大形花、小形花、奇形花がある。そしてその蕾《つぼみ》のまさに綻《ほころ》びんとする刹那《せつな》のものは、円《まる》く膨《ふく》らみ、今にもポンと音して裂《さ》けなんとする姿を呈《てい》している。
花中に五|雄蕊《ゆうずい》と五|柱頭《ちゅうとう》ある一|花柱《かちゅう》とがあるが、この雄蕊《ゆうずい》は先に熟《じゅく》して花粉《かふん》を散らし、雌蕊《しずい》に属する五柱頭は後に熟《じゅく》して開くから、自分の花の花粉を受けることができず、そこで昆虫の助けを借りて、他の花の花粉を運んでもらうのである。つまり桔梗花《ききょうか》は、自家結婚ができないように、天から命ぜられているわけだ。植物界のいろいろな花には、こんなのがザラにある。花を研究してみると、なかなか興味のあるもので、ナデシコなどもその例に漏《も》れなく、もしも今昆虫が地球上におらなくなったら、植物で絶滅するものが続々とできる。
花の時の子房《しぼう》は緑色で、その上縁《じょうえん》に狭小《きょうしょう》な五|萼片《がくへん》がある。花後《かご》、この子房《しぼう》は成熟して果実となり、その上方の小孔《しょうこう》より黒色の種子が出る。
地中に直下する根は多肉《たにく》で、桔梗根《ききょうこん》と称し※[#「ころもへん+去」、第3水準1−91−73]痰剤《きょたんざい》となるので、したがってこの桔梗《ききょう》がたいせつな薬用植物の一つとなっている。春に芽出《めだ》つ新葉《しんよう》の苗《なえ》は、食用として美味《びみ》である。
[#「キキョウの図」のキャプション付きの図(fig46821_04.png)入る]
リンドウ
リンドウというのは漢名《かんめい》、龍胆の唐音《とうおん》の音転《おんてん》であって、今これが日本で、この草の通称となっている。中国の書物によれば、その葉は龍葵《りゅうき》のようで味が胆《きも》のように苦《にが》いから、それで龍胆《りんどう》
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