が貴ばれる。そこでこの辛味ある蓼を本蓼《ホンタデ》とも真蓼《マタデ》ともいっている。そしてその辛味のないものを犬蓼《イヌタデ》と称する。すなわち役立たぬ蓼の意である。大槻博士の『大言海』によれば、タデは「爛レノ意ニテ口舌ニ辛キヨリ云フト云フ」と出ている。
小野蘭山の『本草綱目啓蒙』馬蓼イヌタデの条下に「品類多シ野生シテ辛味ナク食用ニ堪ザル者ヲ皆イヌタデ或ハ河原タデト呼ミナ馬蓼ナリ」とある。これでみるとイヌタデとは一種の蓼の名ではなく、すなわち辛くない蓼の総称である。ゆえにアカノママの一つを特にイヌタデと限定した名で呼ぶのはよろしくない。
昔にはオオケタデすなわち蓼草をイヌタデといったが、今日は既にこの名は廃絶している。そしてこれは深江輔仁《ふかえのすけひと》の『本草和名』に「和名以奴多天」と出ているから最も古く一千余年も前からの名であることが知られる。
日本で辛味のある蓼はただ一種ヤナギタデ(アザブタデがじつはヤナギタデで、この蓼は野生はなく圃につくってあって、その葉を料理に用いる)すなわち Polygonum Hydropiper L[#「L」は斜体]. があるだけである。その
前へ
次へ
全361ページ中67ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
牧野 富太郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング