さは六五センチメートルばかり(二尺一寸五分ばかり)に出入りして無数に分枝し、ふさふさとして垂れ下っており、帯黄白色で直径は太いところで二ミリメートルばかりもあり、その外面が短かい管のような環になってひび割れがしているのが特徴である。その変種名の annulata は環状という意味で、この特状に基づいた名である。ふるくからサルオガセと呼んでいた地衣は主としてこの品を指し、それはこの属中で第一等長大な形状をしていて著しいから、人々の目につきやすい。サルオガセは猿麻※[#「木+裃のつくり」、第3水準1−85−66]《サルオガセ》の意、この麻※[#「木+裃のつくり」、第3水準1−85−66]《オガセ》は績んだ麻を纏い掛けて繰《く》る器械であるが、このサルオガセの場合は麻糸《おいと》の意として用いたものだ。
 しかるに我国近代の学者は Usnea longissima Ach[#「Ach」は斜体]. をもってサルオガセと呼んでいるのは、昔からのことを考え合わすとじつは不徹底である。もちろんこれもサルオガセの一種(私はこれをナガサルオガセと呼んでいる)には相違ないが、しかし昔から書物に出ているサル
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