オガセそのものではない。では近代学者が不案内にも強いて妄りにこれをそうした訳はどうかとたずねてみれば、それは初め先ず明治三年(1870)出版の博物館、天産部、植物類の『博物館列品目録』に「サルヲガセ、松蘿《ショウラ》 Usnea longissima Ach[#「Ach」は斜体].」と出ている。次いで三好学《みよしまなぶ》博士等が植物教科書などを書いたときに、その種名の longissima(非常に長いという意味)に魅せられて、これを無条件にサルオガセとしたので、その後の人々もサルオガセといえば Usnea longissima, Usnea longissima といえばサルオガセであると相場がきまったようになった。これらの人々は日本で前からサルオガセといっている品を正当に掴むことが出来ないでいるのは残念である。
 サルオガセを Usnea plicata Hoffm[#「Hoffm」は斜体]. var. annulata Muell[#「Muell」は斜体]. とした初めは私で、私は、これを大正三年(1914)十二月に東京帝室博物館で発行した『東京帝室博物館天産課日本植物|乾※[#
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