おこのほか灌園の筆で美濃半紙へ着色で描いた小金井桜等の景色画二、三枚をも併せて白井君に進呈しておいたが、それらの画は今どこへ行っているのだろう。
 また小野蘭山《おのらんざん》自筆の掛軸一個も気前よく同君に進呈しておいた。それに蘭山先生得意の七言絶句詩が揮亳《きごう》せられてあったが、今その全文を忘れた。なんでも山漆、鶴虱のことが詠じてあった。そしてこの掛軸は私の郷里土佐佐川町の医家山崎氏の旧蔵品で、私は前にこれを同家から購求したものであった。同時に同家所蔵の若水《じゃくすい》本『本草綱目《ほんぞうこうもく》』もまたこれを買い求め、これは今も私の宅に在る。この山崎家の今の主人は医学博士山崎|正董《まさただ》氏であったが、今は既に故人となった。

  サルオガセ

 地衣類植物(Lichenes)に昔からサルオガセと呼ぶものがあって、書物に出ている。すなわちそれはサルオガセ科(Usneaceae)の Usnea plicata Hoffm[#「Hoffm」は斜体]. var. annulata Muell[#「Muell」は斜体]. である。
 このサルオガセは山地の樹木に着いて生じ、長
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