シャギシャギはするが塩味があって存外食べられる。そして海藻の香はあるが、別に特別な味はない。次いでこれを酢醤油に漬けて味わってみたが、そうするとたちまちミルが多少縮め気味で硬わばり、かえって生食するよりは不味を感ずる。それはちょうど『越後名寄《えちごなよせ》』に記してある通りである。このように私は生まれて初めてミルを味わってみたが、あまり感心する品ではなく、まず昔からのことを回想し趣味としてこれを口にする程度のものである。
 ミルの語原は不明だといわれているが、私の愚劣な考えでは、それはあるいはビルもしくはビロから転訛したものであろうと思われる。すなわち生鮮なミルを静かに振ってみると弾力があって、ビルビルビロビロとするから、そのビルあるいはビロが音便によってついにミルになったのではなかろうかと想像するが、どんなもんだろうか。
 ミル属(Codium)には多くの品種があって、いずれも食用になるのであろう。昭和九年(1934)六月に東京の三省堂で出版した岡田|喜一《よしかず》君の『原色海藻図譜』によれば、次の種類が原色写真で出ているからそれらを知るには極めて便利である。すなわちハイミル、ヒ
前へ 次へ
全361ページ中245ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
牧野 富太郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング