ェ多分 Allium sativum L[#「L」は斜体]. すなわち Garlic そのもので、これは松村任三《まつむらじんぞう》博士の『改訂植物名彙』前編漢名之部に出ている小蒜すなわち蒜である。松岡恕菴《まつおかじょあん》の『用薬須知《ようやくすち》』に小蒜をノビルとしてあるのは非である。また『倭漢三才図会《わかんさんさいずえ》』に蒜すなわち小蒜をコビル、メビルとしてあるのは古名に従ったので、それはよいとして、さらにこれをニンニクとしてあるのはよろしくない。また大蒜すなわち葫(古名オオヒル)をオオニンニクとしてあるのも不必要な贅名で、これは単にニンニクでよい訳だ。そして葫《こ》すなわち大蒜のニンニクの学名は Allium sativum L[#「L」は斜体]. var. pekinense Maekawa[#「Maekawa」は斜体](=Allium pekinense Prokh[#「Allium pekinense Prokh」は斜体].=Allium sativum[#「Allium sativum」は斜体] L. forma pekinense[#「forma pekinense」は斜体] Makino)である。
 ニンニクは昔はオオヒルといったが、この称えは今は廃れそのオオヒルは古名となった。日本で昔単にヒル(その鱗茎を食うと口がヒリヒリするのでいう)と呼んだのは、実際はニンニクをいったものだが、書物の上ではこのニンニクのオオビルとコビルすなわちメビルとの二つを指して、かくヒルというとなっている。私は今このコビルをニンニクに対せしむるためにそれを新称してコニンニクともいってみたい。それはニンニクに比べればやや小形だからである。
 Allium sativum L[#「L」は斜体]. の和名はコビル(コニンニク)であるから、その俗名の Garlic もまた厳格にいえば同じくこれをコビルとせねばならない。普通の英和辞書にあるように単にニンニクでは正解ではない訳だが、先ず先ず通俗にいえばそれでも許しておけるであろう。そして強いてニンニクの俗名を作ればすなわち Large Garlic とでもすべきものだ。

  日本で最大の南天材

 明治三十九年(1906)八月に滋賀県の人々の主催で、近江伊吹山植物講習会が開かれ、四方から雲集した講習員は約三百名もあった。
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