]. があるが、ともに西半球北米の地に花さく宿根草である。そして右ジャコウソウモドキは園芸植物となって我国にも来り、時々市中の花店へ切り花として出ていた。石井勇義君の『原色園芸植物図譜』にはその原色図版がある。
上の『山海経《せんがいきょう》』にある薫草は、蓋し零陵香の一名なる薫草と同じものであろう。またこれは※[#「くさかんむり/惠」、第3水準1−91−24]草ともいわれる、すなわちクチビルバナ科のカミメボウキ(神眼箒の意)で Ocimum sanctum L[#「L」は斜体]. の学名を有し、メボウキすなわち Ocimum Bacilicum L[#「L」は斜体]. と姉妹品である。
[#「ジャコウソウ(Chelonopsis moschata Miq[#「Miq」は斜体].)写生の名手|関根雲停《せきねうんてい》筆、牧野結網《まきのけつもう》修正」のキャプション付きの図(fig46820_30.png)入る]
狐ノ剃刀
キツネノカミソリ、それは面白い名である。狐も時には鬚でも剃っておめかしをするとみえる。それからこのコンコンサマが口から火を吹き出すこともあれば、また美女に化けて人を誑かすという段取りになるのだが舞台が違うからここでは省略だ。
このキツネノカミソリはヒガンバナ科(マンジュシャゲ科、石蒜科)のいわゆる球根草で、日本国中諸所の林下に生じ、秋八月から九月にかけて柑赤色の花が二、三輪独茎の頂に咲く。誰もこれを庭に植える人はないが、しかしそう見限ったもんでもない。学名を Lycoris sanguinea Maxim[#「Maxim」は斜体]. というのだが、この種名の Sanguinea は血赤色の意で、その花色に基づいたものである。
この属すなわち Lycoris 属[#「属」に「ママ」の注記]には日本に五種があって、その一は右のキツネノカミソリ、その二は桃色の花が咲き属中で一番大きなナツズイセン、その三は黄花の咲くショウキラン、その四は赤花が咲き最も普通でまた多量にはえているヒガンバナ一名マンジュシャゲ、その五は白色あるいは帯黄白色の花が咲きヒガンバナとショウキランとの間の子だと私の推定するシロバナマンジュシャゲである。今日までまだ純粋の白色ヒガンバナを得ないのが残念であるが、しかしこれはどこかにあるような気がする、というのは数年前
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