木の藤本だけれど)というので開の上へ草冠を添えたものである。こんなあだ姿をしたこの実から始めてあけびの名称が生まれたのだが、このあけびはすなわちあけつびの縮まったもので、つびとは、ほどと同じく女のあれの一名である。しかし人によってあけびは開肉から来たと唱えている。すなわちその実が裂けて中の肉を露わすからだといい、また人によってあけびは欠伸《あくび》から出た名だといっている。すなわちその実の裂け開いたのを欠伸口を開くに例えたものである。国によるとあけびをあくびと呼んでいる所がある。なおあけびの語原についてはその他の説もあるが、しかし上の開肉の説も欠伸の説もなにもまずいことはないがあまり平凡で、かえって前の開けつびの方が趣があって面白く、また理窟にも叶っている。そのうえ既に昔に※[#「くさかんむり/開」、86-12]の字を書いたりまた山女、山姫の字を用いたりしたところをもってみれば、その方の説を主張してもまんざら悪いこともなかろうと思う。あけびを一つにおめかずらと称え、またおかめかずらと呼ぶのもけだし女に関係を持たせた名であろう。
 右のように、元来あけびは実の名であるがそれが後には植物を
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