、小生の本心は漫《みだり》に他を攻撃して楽しむものにあらず、唯《ただ》多年来《たねんらい》心《こころ》に釈然《しゃくぜん》たらざるものを記《しる》して輿論《よろん》に質《ただ》し、天下後世の為《た》めにせんとするまでの事なれば、当局の御本人に於《おい》て云々《しかじか》の御説もあらば拝承《はいしょう》致《いた》し度《たく》、何卒《なにとぞ》御漏《おんもら》し奉願候《ねがいたてまつりそうろう》。要用のみ重《かさね》て申上候。匆々《そうそう》頓首《とんしゅ》。
  二月五日[#地から2字上げ]諭吉
   …………様
 尚《なお》以《もって》彼の草稿《そうこう》は極秘《ごくひ》に致し置、今日に至るまで二、三親友の外へは誰れにも見せ不申候《もうさずそうろう》。是亦《これまた》乍序《ついでながら》申上候《もうしあげそうろう》。以上。
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     勝安芳氏の答書

 従古《いにしえより》当路者《とうろしゃ》古今一世之人物にあらざれば、衆賢之《しゅうけんの》批評《ひひょう》に当る者あらず。不計《はからず》も拙老《せつろう》先年之|行為《こうい》に於て御議論《ごぎろん》数百言《すうひゃ
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