の「物語」中、唯一の正しい告白は、神の教のためには王陵を曝くもまた可なりというフェロン師その人の心事のみであろう。儲けそこなった山師オッペルト自身は、著書『禁断国・朝鮮紀行』一巻を、フェロン師でなくドン・ペドロ二世に献題した。
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謹んでこの書を
ブラジル皇帝
ドン・ペドロ二世陛下に捧ぐ
陛下の保護によりて地理学および人種学の研究は長足の進歩を遂げたるが故に。
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(オッペルトの『禁断国』は英独両語版とも、上野図書館にあるが、たしか英語版の方だったと思う、「明治十四年十二月七日購求、教育博物館印」と大きく押してあった。このほかにW・E・グリフィスの『仙逸国民』(一八八九)、モールスの『支那帝国国際関係史』、窪田文蔵氏『支那外交通史』その他を参照したことを付記しておく)。



底本:「黒船前後・志士と経済他十六篇」岩波文庫、岩波書店
   1981(昭和56)年7月16日第1刷発行
底本の親本:「服部之総全集」福村出版
   1973(昭和48)〜1975(昭和50)年
初出:「黒船前後」大畑書店、
   1933(昭和8)年9月刊
※底本は、
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