台湾征伐以来反目している日本と中国との間に仲裁者として登場した。ついで朝鮮にたいしては、日本を水先案内としてイギリスに対抗した。この英・米の対立競争を巧《たくみ》に利用したところに陸奥宗光《むつむねみつ》外交が不平等条約の改正に成功した秘密がある。
 ポーツマスでアメリカが日露戦争の仲裁役を買って出たのも、ペリー来航いらい一貫してもっていた「日本を足がかりにしたアジア進出」という年来の野望をとげようとするこんたんであったといえる。

[#7字下げ]第二の開国[#「第二の開国」は中見出し]

 百年来のこんたんを百年目にちょうど実現したものといえようか。それがサンフランシスコ条約であり、日米安全保障条約であり、行政協定であり、今また批准《ひじゅん》されようとしている日米通商航海条約だということができよう。百年前黒船がきたときに、われらの祖先は直観的に祖国の独立がおびやかされることを感じとった。尊王と結びついたためにゆがめられた形で表現されていたが、それは半植民地化の危機にたいする愛国の本能である。いま百年ごの「第二開国」にあたって、一部の志士ではなく、日本国民の最大多数の階級である労働者
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