黒船来航
服部之総

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)阿片《あへん》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)佐藤|信淵《のぶひろ》
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[#7字下げ]中国制覇の足がかり[#「中国制覇の足がかり」は中見出し]

 阿片《あへん》戦争(一八四〇―四二)で中国が開国した後は極東の一角日本を開けばこれで旧文明国を資本主義世界に開放する事業が完成するわけである。だから南京《ナンキン》条約で、この次は日本の番だということはイギリスを先頭とする資本主義列強の常識であったばかりではなく、日本にとっても常識であった。しかもその客がどんな客人であるかはインドや中国を開国させた実績にてらして日本の愛国者にはよく分っていた。だからこそ林子平《はやししへい》が『海国兵談《かいこくへいだん》』を出し、橋本左内《はしもとさない》は日本が「第二のインドになる」ことを恐れた。
 当時の資本主義は貿易第一主義を奉ずる自由経済の全盛期で、いわば資本主義の青年時代であったが、それですらインドや中国にたいする植民地化の戦争、その戦争のけっかとしての不平等条約と、その不平等条約によ
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