か》は帆船にとっては輓歌《ばんか》であった。「グレート・イースタアン」が起工される四年前、一八五〇年の数字で、全世界の船舶総トン数は九百三万二千トン、そのうち八百三十万トンすなわち九一・九%までは帆船であった。ところが「カイゼル・ウィルヘルム二世」が進水する一年前、一九〇〇年には、総トン数二千六百二十万五千トンのうち六一・九%までは汽船になっていた。
「グレート・イースタアン」は鉄造船の権威を確立したけれども汽船としては、換言すれば帆船にたいする新たなる世紀の挑戦者としては、失敗した。帆船はかえって自己を鉄造化することによって、なおしばらくのあいだ、汽船にたいする優越的地位を保つことができた。むろん旅客だけは汽船に譲らなければならなかった。が、年とともに激増してゆく貨物の運輸という部面では、鉄造帆船が商業上の優勝者として残った。全世界の帆船トン数は一八八〇年までは年とともに殖えていっている。
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一八五〇年 〇、八三〇万トン(九一・九%)
一八六〇 一、一八四 (八九・一%)
一八七〇 一、四一一 (八四・二%)
一八八〇 一、四五四
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