コリンス会社を完全にノックアウトした(一八五八年)ほどの実力――柄は小さいがサーヴィスは満点という娘盛りの一大船隊を擁《よう》して控えていた。
そこで当然、「グレート・イースタアン」にべらぼうな積載容力があればあるほどいよいよ算盤が合わなくなる、という悲劇が生じてきた。そもそもが客と貨物を満載せんことにはやってゆけないはずにできていたのだ。
そのうち、棄てる神あれば助ける神、という小市民的|譫言《うわごと》を、助けるような出来事が降って湧《わ》いた。旅客でも貨物でもなく、どんな種類の「商品」でもなくたんに一個の使用価値にすぎないところの山のごとき物品を積込む日が、「グレート・イースタアン」を訪れた。商品ではないから、したがってまた「運送」するのでもない。山のごとく積込んだ物を順繰りに大西洋の底へ沈めてゆく「グレート・イースタアン」は、もはや何らの「商船」でもない。皮肉な運命にもてあそばれて商船としては見事落第した彼女がいまは工作船として――海底電線の敷設船として、思いもかけぬ能力を発揮しつつあったのである。
じっさい、大西洋の一方から他方へ、およそ三千マイルにちかい長さの代物《し
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